2019-10

自作小説

エピローグ

「行ってきます」 声をかけた先にあるのは、綾乃がくれた麦わら帽子だった。 彼女が言った通り、恋しくなった時はそれを被ったりしていた。 そうすると懐かしい匂いに包まれ、誰にも見えていなくても、確かに彼女は存在していたんだと思...
自作小説

めぐりめぐるその日

綾乃は、最初から自分を探し求めていた。 思えば、彼女には不自然な点がいくつもあった。 説明してないはずの救急箱の位置を把握していたこと。 何度もおもちゃに触れていたこと。 お風呂に入った時に全く恥じらいがなかったこと...
自作小説

アヤちゃん

✳︎ 「雨降ってきたよ!」 「今日曇りの予報だったのにー」 「どうしよー。もう帰る?」 突然の雨に対する感想は三者三様で、各々の意見が広場に飛び交う。 悠介はそれを他人事のように眺めていた。 ...
自作小説

手紙

悠介くんへ 君がこの手紙を読んでいるということは、どのような形であれ、私が君の前から姿を消してしまったということでしょう。 この手紙に辿り着いてくれて、私は嬉しく思います。 だけど、少しだけ複雑な気持ちです。 ...
自作小説

麦わら帽子

「どこに行ったんだ……!」 水族館からあれだけ走ったのだ。 お店に着いた時、綾乃はお世辞にも元気だとは言えなかった。 それを踏まえれば、そこまで遠くには行っていないはずだ。 しかし、そんな考えを嘲笑うかのように綾乃は...
自作小説

暴走

悠介は走り続けた。 目的地は確実に近付いている。 冷静な顔をしたもう一人の自分が、「どうしてそんなことをしてるの」と問いかけてくる。 目的地は逃げたりしない。 それなのに何故そんなに急ぐのか、と。 分からなかっ...
自作小説

決心

店長に相談してから二日が経ち、悠介は綾乃と水族館に来ていた。 何故二日なのかというと、今日が初の給料日だったからだ。 初めて間もないということもあり、その量は微々たるものだったが、自分の頑張りへの対価と考えれば感慨深いものがあっ...
自作小説

相談

八月も中旬に入り、夏休みは折り返し地点を迎えた。 あの手紙を見て以降、綾乃がいつ消えてしまうか気が気ではなかった。 しかし、一日経っても二日経っても特に変化はなく、彼女は普段通りの様子で家に居座り続けた。 そのことに、悠介...
自作小説

予感

家に帰り自室に戻ると、綾乃はいつかのように例の球体を弄んでいた。 「またそれ出しちゃったんですか?」 「……悠介くん。帰ってきてたんですね」 遊ぶことに夢中でこちらに気付かなかったのか、綾乃はビクリと身を震わせた。 ...
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両親の想い

存分に加熱されてることを証明するように、目の前にはバチバチと音を鳴らした鉄板が置かれている。 火傷しないようにそっとハンバーグに切り込みを入れると、中からチーズがドッと溢れ出した。 瞬く間に鉄板は黄色一色に染まってしまった。 ...
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