無慈悲な結末

少女の物語は終わりを迎えようとしていた。

ふと周りを見渡してみたが、やっぱり私以外には誰もいなかった。

ここには私しかいない。

他の誰にも踏み込めない、私だけの場所。

しかし、それは同時に私がこの世界に隔離されている事を意味していた。

他の世界を知ることもなく、自分の中の世界だけで生きていく。

それはとても幸福であると同時に、とても孤独なことでもあった。

そんな複雑な感情が、私の心に渦巻いた。

 

父は病気を患っていた。

それも、心労が原因によるものだった。

父はとても優しい人で、どんな時でも笑顔を絶やさないような人だった。

しかし、それ故にストレスを溜め込んでしまうことも多かった。

父の優しさは、自己犠牲の上に成り立っていた。

……しかし、それは本当に優しさだったのだろうか……?

優しかったのではなく、自分の意見を言うことが出来ず萎縮していただけなのでは無いだろうか……?

かつての仲間を失った私は、そんな風に考えてしまっていた。

そして、そんな穿った見方しかできなくなっている自分にひどく嫌気がさした。

私は自分が嫌いになった。

 

忌引き期間が終わり、私は再び学校に通っていた。

私の隣には、もう誰もいなかった……

一人になっても、女は変わらず私に絡んできた。

「篠原ぁ、秋月のやつ自殺したみたいだなぁ」

「……」

私は何も言わなかった。

……いや、言えなかった。

「なんで自殺したか、お前知ってんじゃねーの?教えてくれよ」

「……知らない」

「あ?」

「私は知らないです」

嘘だった。

本当は全て知っている。

だけど、それを懺悔することが出来なかった。

何がおかしかったのか、女は突然笑い始めた。

「……お前、最高だなぁ」

「……えっ?」

そして、女はいつものように私の耳元で囁いた。

「全部見てたんだよ。私が知らないとでも思ったか……?」

心臓が飛び跳ねた。

身体が熱いような寒いような、そんな感覚に陥った。

嫌な汗をかいてしまい、それを見抜かれないように必死に隠した。

「な、なんの、ことですか?」

「お前が殺ったんだろう?」

動揺を隠せなかった。

声は上ずり、瞬きは増え、無意味に手を触ったりしていた。

そして、それを見て確信したかのようにこう言った。

「これを世間が知ったらどうなるんだろうなぁ?」

「やめてっ!」

「へぇ〜。ってことは認めるのか?」

私は、焦りのあまり墓穴を掘ってしまっていた。

頭が真っ白になり、もう何も考えることが出来なかった。

「そういえば、お前の親父も死んだんだってなぁ?本当についてねーな、お前」

……なんでこの人が父のことを知っているの?

そう思ったが、理由は簡単だった。

それは、私が忌引きで休んでいたからだった。

学校にいない間に何があったかは分からないが、噂というのはすぐに広がってしまうものだ。

「……もしかして、親父もお前が殺したんだったりして!」

「ちがう、ちがうっ!ちがう……!」

「てめーのことなんて信じられっかよ」

私は必死に否定するだけで、まるでその言葉しか知らないか子供のように同じ言葉を繰り返していた。

「まあ、そんなことはどっちでもいい」

女はニヤニヤと笑っていた。

「お前が関わる人間はみんな死んじまってるよなぁ?次は母親がしんだりしてな。あはははっ」

「やめて……もうやめて……」

「お前は死神なんだよ!お前と関わったやつはみんな死ぬんだ」

……そして、女は私にトドメを刺した。

「お前なんかいない方がよかったんだよ。存在してるだけで罪なんだよ、お前は」

その瞬間、私の心は砕け散った。

ヒビの入っていたガラスがバラバラに割れ、激しい音を立てて崩れていく。

……もう何も感じなくなっていた。

そして、死んでしまったように私はその場に倒れた。

ーー

 

物語は不意に終わりを告げた。

それは、今まで見たどんなストーリーよりも後味の悪いもので、私の心を延々と抉り続けていた。

 

前回→ザンコクな世界

続き→真実

目次→新しい君と

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