隠された本性

秋月さんから話を聞き、偶然にも目的を果たせた僕たちは、ホテルへ来ていた。

……そして困ったことに、僕たち三人は同室になってしまった。

当日のチェックインだったため、予備の部屋が空いてなかったのだ。

僕は別の宿を探そうとしたが、時間が遅かったこともあり、止むを得ず断念した。

女性陣は、同じ部屋でも構わないと言ってくれた。

さすがに年頃の男女が同じ部屋で過ごすのはまずくないだろうか?

そう思っていたが、二人は僕のことを良くも悪くも信じ切っていた。

そんな信用を無下にするのはどうかと思ったので、僕はその厚意に甘えておくことにした。

 

「まさか三人一緒の部屋になっちゃうなんてね〜」

そう言って、美月はケラケラと笑っていた。

「知らない土地で野宿させるのはさすがに可哀想ですしね……」

「二人とも本当にありがとう。……っていうか、なんかごめん」

二人は声を合わせて、気にしなくていいよと言ってくれた。

とはいえ、ベットは一つだけだった。

なので、美月と紺野さんで一緒に寝てもらい、僕は椅子か床で寝ようと考えていた。

しかし、美月はとんでもないことを言い始めた。

「充君さ、紅葉ちゃんと一緒に寝ちゃいなよ〜」

美月は小悪魔モードに入っていた。

僕が突っ込むより先に、紺野さんが顔を真っ赤にして反応していた。

「美月さん!?な、なんてこと言うんですか!」

「え〜?紅葉ちゃんは充君のこと嫌なの?」

「嫌とかそういう問題ではなく……その……」

後半はごにょごにょと喋っていて、何を言ってるか全く聞き取れなかった。

「いや〜、本当に紅葉ちゃんをからかうのは楽しいな〜!」

「……そういう美月さんこそ、一緒に寝たらいいんじゃないですか?」

珍しく紺野さんが反撃に出ていた。

いつもやられっぱなしでは、彼女も納得できなかったのだろう。

そして、この一言が思いも寄らぬ展開へと足を運んだ。

「えっ!?いや、わ、私はいいよ!」

美月は、明らかに動揺していた。

そして、観察眼の鋭い紺野さんはそれを見逃さなかった。

「美月さん、どうしたんですか?顔が真っ赤ですよ?」

嘘だ。

実際はカマをかけただけだった。

しかし、動揺してた美月は更に慌てふためいて、頰を必死に守るように手で隠した。

それを見た紺野さんは、やっぱり、と一人納得していた。

「なるほど〜、美月さんはそういうタイプだったんですね〜」

煽るような口調で、美月の顔色を伺っていた。

「な、なんのこと?」

「よく攻めてくる割には受けに回ると弱いってことですよ。……美月さんは自分が受けに回らないようにいつも私をからかってたんですね〜」

紺野さんは、わざとらしく分析を始めた。

それを聞いた美月は、耳に手を当てわーわーと騒ぎ始め、何も聞こえてないふりをし始めた。

それを見た紺野さんは、いつもの美月の様な意地の悪い笑顔を浮かべて、彼女の手を取って耳から離させた。

「これでちゃんと、聞こえますね」

「うう〜……」

「美月さんは、秋山君と一緒に寝たいんですよね?」

「そ、そんな事ないよ?」

「何故ですか?」

「それは……」

「それは、なんです?」

「あぅ〜……」

紺野さんの言葉攻めに、美月は完全にたじろいでいた。

「顔真っ赤になっちゃて可愛いですね。恥ずかしいですか?至近距離でそんな顔を見つめられる気分はどうですか?隠したいですよね〜」

「ちょ、紺野さん。その辺にしときなよ……」

このままだと取り返しのつかないことになる。

そう予感をした僕は、気付けば彼女を止めていた。

美月はというと、完全に目をクルクルと回していて今にもノックアウト寸前だった。

「……ごめんなさい。楽しくなってきちゃって、つい調子に乗っちゃいました」

紺野さん恐るべし。

美月のからかいが可愛く見えるレベルだった。

……よくよく考えてみたら、バドミントンをやってた時の彼女に少し似ている気がした。

もしかしたら、紺野さんは自覚がないだけでSな一面があるのかもしれない……

一連の流れを見て、そう思ってしまった。

「美月さん、ごめんなさい。手痛かったですよね?」

「えっ……?手は大丈夫だよ。あはは……」

ようやく解放された美月は、苦笑いしながら必死に気持ちを落ち着けていた。

「紅葉ちゃん、ちょっと怖かったです……」

何故か敬語だった。

それほどまでに、彼女の勢いに圧倒されたのだろう。

「本当にごめんなさい。でも、これでおあいこですよね!」

そう言って、満面の笑みを浮かべていた。

「これからは程々にからかおう……」

本当に懲りないなぁ。

心の中で一人突っ込んでしまった。

「……それで、どうするんですか?」

「えっ?」

「だからその……寝る場所のことですよ」

「それなら、美月と紺野さんで一緒に寝なよ。僕は適当にその辺で寝るから」

「そんな……風邪ひいちゃいますよ?」

「大丈夫でしょ」

「いえ。こんな所で風邪引いたら大変です。明日帰れなくなりますよ?」

「それはそうだけど。じゃあどうするの?」

「……三人で一緒に寝ましょう」

「「……えっ?」」

彼女の一言で、僕たちの間に流れる空気は完全に凍りついてしまった。

「……いや、それはまずいんじゃない?」

「け、決してやましい意味ではないですよ!……それに、みんなで寝れば誰も仲間はずれにならないですし」

「じゃあ三人で寝よっか」

「ちょっと、美月までどうしたの!?」

「紅葉ちゃんは本気で私たちのこと心配してくれてるんだよ?」

確かにその通りだった。

紺野さんが純粋な気持ちで話してることは僕にだって分かる。

彼女は本当に根から優しい人間なのだ。

「秋山君が一緒に寝ないなら、私が椅子とか床で寝ますよ?それでもいいんですか?」

こうなった紺野さんは誰にも手がつけられなかった。

……仕方ない、ここは大人しく言うことを聞いておこう。

「女子にそんなとこで寝させられないし、一緒に寝るよ」

自分で言ってて小っ恥ずかしくなってきたが、やましい意味はないので、あくまで平常を装った。

「……よかったです」

「それで、場所はどうするの?」

「うーん。美月さんどうします?」

「充君が左で、真ん中が私で、紅葉ちゃんが右。これでどう?」

「それが良いですね」

「僕もそれで大丈夫」

「じゃあ決定ね!……喉乾いたし、何か飲み物買ってくるよ」

「僕緑茶で」

「私はレモンティーでお願いします」

「了解。じゃあちょっと待っててね〜」

こうして、僕たちの夜は始まった。

 

前回→旧友の意思

続き→膨れ上がる疑問

目次→新しい君と

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