『HELLOWORLDif』感想 これは、嫌いな自分を好きになるまでの物語

小説紹介

以前から気になっていた、劇場版『HELLOWORLD』のスピンオフノベライズ『HELLOWORLDifー勘解由小路美鈴は世界で初めての失恋をするー』を読みました。

今回はその感想や、『if』で分かったことをまとめていこうと思います。

この作品は、映画ではただ者ではない雰囲気を感じさせつつも、途中から姿を消してしまった勘解由小路美鈴が主人公の物語です。

スピンオフと言いつつも、物語の世界観や話の大筋は変わりません。

それを勘解由小路さん目線で進めつつ、もしかしたらあったかもしれないというお話になっています。

アドベンチャーゲームのルート分岐みたいな感じですね。

『if』ということで、もしかしたら原作の方とは世界線が違うのかもしれません。

しかし、原作を補完する情報が出ていたり、問題のラストシーンの謎が分かりやすくなっていました。

映画を見た人や原作を見た人はもちろん、そうじゃない人にも勘解由小路美鈴の成長物語として読んで頂ければ面白いのではないかと思いました。

 

※ここから先は本編の重大なネタバレがありますのでご注意ください。

 

まだ見てない人や、ネタバレされたくないけど気になるという方はこちらの記事を読んでみてください!

 

感想

 

キャッチコピーである『彼女の誠実な失恋が世界を救う』から何となくの流れはイメージしていました。

なので、ストーリー自体はある程度予想はできていました。

それでも、勘解由小路美鈴というのがどのような人物だったのかということが深く掘り下げられていたのがとても良かったです。

彼女は自分を変えたいと強く願っていました。

周りに流され、自分の気持ちを閉じ込め、受け身で生き続けた結果、彼女は後悔する以上の悲しみを知ってしまいました。

そして、そんな自分を激しく嫌い、好きな自分になれるように努力していきます。

映画では勘解由小路さんはアイドルのような存在で、直美にとって憧れでした。

しかし、それも彼女が変わろうと頑張った結果だったんですね。

直美目線では最初からそういう人だったかのように見えますが、そんなことは無かったのです。

見えないところで努力しているし、それを知ってくれてる人もいる。

そんな描写が印象的でした。

勘解由小路さんは「頑張ってたり、諦めずに挑戦し続ける人が好き」と序盤で言うのですが、ここに彼女らしさが詰まっていたのではないかと思います。

彼女がそう思えたのは、自分が挫けそうになりながらも努力して変わることができたからです。

その辛さや大変さを知っているからこそ、それを分かってあげられるようになりました。

そして、劇中のように頑張り続ける直美を見守り続けるようになりました。

仲間意識や、先輩のような気持ちがあったのかもしれませんね。

自分と同じ境遇を辿っていて同族嫌悪する人、逆に好きになる人、何も感じない人。

様々な人がいるかもしれませんが、私は好きになりたいと思いました。

自分と似たような境遇というだけでも親近感が湧きますし、何よりその人たち間同士でしか話せないことや助けられないことがあります。

もちろん、みんなが自分自身を強く支えられればそれに越したことはないと思います。

しかし、残念ながら人はそこまで強くないですし、強かったとしても弱ってしまう時があります。

そんな時に、事情を知ってる人がいれば支えてあげることができるかもしれません。

そして、自分が困った時にはその人が支えてくれるかもしれません。

そんな輪が広がればいいなと思います。

ただ、そんな人が好きと言う勘解由小路さん自体がなかなか報わないのが辛かったですね。

訳あって、彼女は好きになっていた自分を再び嫌いになってしまいます。

中盤の恋模様の生々しさはなかなかにリアルでした。

好きだけど嫌い。

一緒にいたいけどいたくない。

相反する二つの感情がせめぎ合い葛藤する姿は、まさにこの物語の主人公でした。

好きだったことを気付くことすら出来なかった最初と違い、二度目はそれをハッキリと自覚します。

知ってしまったら簡単に見過ごすことはできないですよね。

知らない方が良かった、知りたくなかったと思うことだって多いでしょう。

最初の彼女なら間違いなくそう嘆いていたはずです。

しかし、彼女は変わることを望み、自分と向き合うと決意しました。

自分の弱さに真正面から向き合い、自分がやりたいことを選ぶ。

仮に、それで苦しい思いをしたとしてもです。

私情を抑え、姿を変えてまで勘解由小路さんは縁の下の力持ちに徹し続けました。

彼女が選んだこととはいえ、これではあまりにも報われません。

だからこそ、2037年でナオミに会って告白した時はすごく幸せだったんじゃないかと思います。

恋心に気付いたは良いものの、今度は直美に告白することすら許されない状況でした。

そうすれば未来が変わってしまいますし、作戦も決行できなくなってしまいます。

そして何より、直美の心が一行さん一筋だからです。

気持ちを自覚しながらもそれを伝えられないのはもどかしいですよね。

それを伝えることこそが、彼女が報われるために一番大切なことだったと思います。

微かな希望を抱かないために、しっかりと振られる。

それこそが勘解由小路さんを解放する唯一の手段です。

そして、それを叶えられるのはナオミしかいませんでした。

勘解由小路さんは直美とナオミの努力を知っていましたし、また、ナオミも勘解由小路さんの事情に勘付いていました。

お互いの境遇を知っているからこそ、振ってくれて吹っ切れたのではないでしょうか?

そして、勘解由小路さんは直美と一行さんのために頑張る自分を再び好きになることができました。

何も知ろうともせずに殻に閉じこもっていた時から一転、自分の嫌なところや弱い部分と向き合い、最後には世界すら救う。

自分の幸せよりも、二人の幸せを願った。

いえ、二人の幸せこそが勘解由小路さんにとっての幸せでもあったんですね。

彼女の決意と行動が、現実世界のナオミや2037年のナオミを救いました。

まさに、『彼女の誠実な失恋が世界を救う』物語でした!

 

ifで判明した事実

 

謎が多い『HELLOWORLD 』でしたが、『if』で分かった情報をここでは挙げていこうと思います。

現実世界は何年だったのか

 

結果的に言いますと『2047年』でした。

小説版や劇場版でも現実世界の描写はありましたが、具体的な年は明かされていませんでした。

しかし、今回ミスズという人物が現れ、現実世界について語られる機会が増えました。

ミスズは勘解由小路さんの20年後の姿です。

ミスズはナオミ同様に目的を果たすためにアルタラ内に侵入してしたのです。

現実世界である2047年では、一行さんと勘解由小路さんは親友となっていました。

そして、二人は同じ研究所で仕事をしていて、ナオミ救出の実行隊でもありました。

ミスズはルリが主任だと言っていましたので、恐らく2037年のナオミと同じような立場なのだと思います。

映画のナオミを一行さんと置き換えると分かりやすいかもしれませんね。

ルリとミスズが会話するシーンが出てきたり、ルリと勘解由小路さんが会話をするシーンがあったりと、原作よりも現実世界が描写が多かったです。

ミスズと勘解由小路さんはナオミを救うという本来の目的が分かっていて動いてますので、物語の軸が原作よりも分かりやすいというのも良かったと思います。

映画では最後のどんでん返しのために現実世界の情報を伏せていたという感じがありましたからね。

ただ、映画でも描写されていたように、どうして月にいたのかということや、ナオミが脳死状態になってしまった具体的な原因までは分かりませんでした。

というか、そもそも『if』の物語なので、こちらでは月にいないのかもしれません。

その辺りは想像にお任せするとのことなのかもしれませんね。

 

アルタラについて

 

少し気になることがありました。

それが、ミスズが「アルタラII」という発言をしていたことです。

この「II」がどういう意味なのか分かりませんでしたが、考察してみました。

 

新たな目的で作ったアルタラ説

 

劇場版では、ナオミがアルタラを使うことで脳死を回避出来るかもしれないと気付き、それを秘密裏に利用している節がありました。

実際に、李さんや千古さんは事態を理解していなかったですし、ナオミも黙っていました。

ただ、今回は違いました。

ミスズが勘解由小路さんに事情を話す時に「堅書直美の脳死蘇生プログラム」だとハッキリと言いました。

全く隠す様子はありませんでしたし、ルリも当然そのために動いています。

つまり、「アルタラII」はナオミの脳死を蘇生するためだけに作られた医療道具と考えるのが無難です。

アルタラを作ったそもそもの目的が違うので隠す必要も無いということでしょう。

SAOのマザーズロザリオ編でもあった『メディキュボイド』と似たような物だと思いました。

監督が同じということもあり、この辺はその知識を活かしたのかもしれませんね。

ただ、千古さんたちの描写が全く無いのが気になりました。

2047年の現実世界では彼らは研究に携わってないのでしょうか?

それとも、彼らとはまた別にルリやミスズが行動しているのでしょうか?

その辺りがもう少しわかると嬉しかったです。

 

まとめ

 

『if』と言いつつも本編にガッツリと絡んだ要素や、新たな事実、真の目的に沿って動く展開は紛れもなく『もう一つの本編』だったと思います。

むしろ、こっちの方が原作と言われても全く違和感がありません。

それくらい完成度は高かったですし、真っ直ぐな物語です。

勘解由小路さんの頑張りによって世界が救われました。

裏方に徹しつつも、彼女は間違いなく主人公でした。

裏主人公という感じですね。

謎の多かった本編を補完することが出来ますし、本編を見れば勘解由小路さんはこんなことをしていたのかと、違った目線で楽しめます。

あと、本編とはあまり関係ないですが、ミスズと勘解由小路さんが何回か百合っぽい言動や行動を取るので、そういうのが好きな人はより楽しめると思います!

映画を見た人は是非読んでみてくださいね!

 

最後に、私自身も小説を書いてますのでよかったら読んでみてくださいね!

 

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